なぜ人は落ち込むと甘いものを食べたくなるのか

07. メンタルと食べもの

心と身体が求めているもの

はじめに

「もう疲れた…甘いものでも食べたい」と、そんな気持ちになった日はありませんか。

仕事でうまくいかない
人間関係で落ち込んだ
なんとなく気持ちが沈む
理由もなくしんどい

このようなとき、なぜか私たちは
ケーキ
チョコ
アイス
和菓子
パンケーキ

いつもより甘いものを欲しくなります。

これは単なる“好き嫌い”ではなく、心理学・脳科学の観点からしっかり説明できる“自然な反応”です。

この記事では
セロトニン
安心回路
過去の記憶のリンク

という3つの視点から
「甘いものを欲しがる心の仕組み」を解き明かしていきます。

読んでいくと「甘いものが欲しくなる自分」を責める必要は一切ない、ということがはっきりわかるはずです。


【H2】甘いものを求める背景には、脳内物質セロトニンがある

まず、落ち込んだときに甘いものが欲しくなる理由の代表が
脳内物質セロトニン です。

セロトニンは
・安心
・安定
・心の平穏
・幸福感

をつかさどる物質で、“心のブレーキ”とも呼ばれています。

しかし、落ち込んだりストレスがたまると、このセロトニンが一時的に不足します。

セロトニンが少ない状態では、
・不安になりやすい
・イライラする
・気持ちが沈む
・ネガティブなことばかり考える

などの反応が出やすくなります。

ここで身体が自然にとる行動が甘いものを求める こと。

甘い糖分は、セロトニンの材料となる「トリプトファン」というアミノ酸を脳に届けやすくしてくれます。

つまり甘いものを欲するのは、脳が「落ち着きたい」とSOSを出しているサインなんです。


【H2】甘いものは“安心回路”を直接刺激する

甘い味は、人間が生まれつき“安心できる味”として認識しています。

なぜかというと、赤ちゃんの頃に飲む母乳はほんのり甘いから。

甘味=安全
苦味=毒の可能性
酸味=腐敗の可能性

という、生存本能レベルの味覚の記憶があり、甘味は最も安心できる味として刻み込まれています。

そのため心理学的にも、甘い味 → 安心回路を起動する刺激と考えられています。

落ち込んだときに甘いものが欲しくなるのは、身体が無意識に「安心の味」を選んでいるから。

これは“心のクセ”ではなく、生き物として自然な反応なのです。


身体のリズムが乱れると、甘味が“整えるスイッチ”になる

落ち込んでいる時、人は必ずといっていいほど
呼吸が浅く なり、
筋肉がこわばり
心拍が不規則 になります。

つまり、身体のリズムが大きく乱れる。

そんな時に甘いものを食べると
・呼吸が深くなる
・表情の緊張がゆるむ
・心拍が落ち着く

といった“身体からの回復反応”が始まります。

特に大切なのが 噛むリズム

ゆっくり噛むという行動は副交感神経を優位にし、自律神経が整いやすくなるため、スイーツだけでなく
・クッキー
・和菓子
・焼き菓子

のような“咀嚼できる甘味”ほど、心の静けさを取り戻しやすくなります。

これは「甘味依存」ではなく、身体が自力で回復するためのサイン

あなたを弱い存在にするのではなく、むしろ「今は休むべき時だよ」と、身体が優しく教えてくれているのです。


甘いものが欲しくなるとき、私の周りではどんなことが起きているか

たとえば、私が以前働いていた職場に、仕事が忙しくなると必ず「チョコレート期」が来る子がいます。
普段は健康志向なのに、目に見えて大変になるとと急に「今日は絶対チョコレートのおやつ食べる」と宣言して帰るんです。

ある日、その理由を聞いてみると「子どもの頃、お母さんが“今日はよく頑張ったね”ってチョコくれたんよね」と話してくれました。

そのとき私は、“甘いものを欲しがるのは依存じゃなくて、安心を思い出す行動なんだ”と、あらためて感じました。

自分自身も、落ち込んだ日の夜にカスタードの濃いプリンを食べた瞬間、胸の奥がふっとほどけたような感覚を覚えたことがあります。
甘い香りや柔らかい食感が「もう大丈夫だよ」と言ってくれているようで、誰かに抱きしめられた時のような安心が返ってくる。

甘いものを欲する自分を責める必要なんて、本当はどこにもない。
それは、誰かを思い出す行為であり、心の形がにじみ出る瞬間でもあるんだと思います。


私自身の気づき:甘いものを欲するのは、心の声だった

そういえば、私も以前、気持ちが沈んだ日に限って、チョコやコンビニスイーツに手が伸びる自分を「また食べてる……」と責めていました。
カロリーもあるし、糖分だってある。
それに、食べてばかりは罪悪感だし、お金を使うことにまた罪悪感。

でも心理学を勉強する中で、ふと気づいたんです。

あ、これは“欲望”じゃなくて心の回復行動なんだって。

忙しさで自分に優しくできない日が続いたり、人間関係で気を張る時間が長くなったりすると、甘いものが強く欲しくなる。

まるで
「ちょっと休んでいいよ」
「無理してるよ」

と心が言っているようで、むしろ身体の健全な反応なんだと思えるようになりました。

この気づきによって、“甘いものを食べたくなる自分”を責めることが減り、むしろ心のサインとして受けとめられるようになりました。


ゆっくり考える時間

落ち込んだときの「甘いもの」は、心が自分を守るための行動だった

私たちは、落ち込んだときの行動を「弱さ」「逃げ」だと思いがちですが、実は真逆です。

甘いものを食べたくなるのは、心があなたを守るために、一番早くて確実な“応急処置”を選んでいる状態。

これは例えるなら、火傷した時に冷たい水を探すようなものです。
反射的で、自然で、本能的な回復行動。

そして甘いものは、
・一瞬で安心できる
・刺激が優しい
・脳にとって“安全”を思い出せる

そんな性質を持っています。

だから心が疲れたとき、もっとも短時間で「ほっ」とできる刺激が、甘い味なのです。

あなたが甘いものを欲したとき、“ああ、心が助けを求めてるんだな”と理解するだけで、気持ちが軽くなります。


もう一歩深く:甘いものと“記憶のリンク”

なぜ特定のお菓子が恋しくなるのか?

「落ち込んだとき、なぜかプリンが食べたくなる」
「疲れた日はアイスが最強」
「仕事で失敗した日はなぜかチョコ」

実はこれ、記憶と安心のリンクが関係しています。

脳は
「安心できた過去の経験」

「そのとき食べたもの」
をつなげる性質があります。

たとえば
・子どもの頃、母が買ってくれたプリン
・受験の時に食べたチョコが心の支えだった
・失恋した日に友達と食べたアイスの安心感

こうした記憶は、脳の“報酬系”に保存されています。

落ち込んだときに甘いものを求めるのは、単なるセロトニンの補給だけでなく、「あのとき楽になれた自分」を呼び戻そうとしている反応

つまり甘いものは「過去の安心を思い出させるボタン」でもあるのです。


今日からできる小さなヒント

① 甘いものを“心のサイン”として受け止める

「欲しがる=悪い」ではなく「心が助けを求めてるんだな」と理解する。

② 食べる前に“ひとこと”声をかけてあげる

「お疲れさま」
「よく頑張ったね」

それだけで満足度が変わります。

③ 安心できる“甘味以外の回復行動”も持っておく

・あたたかい飲み物
・深呼吸
・好きな香り
・数分の散歩
・音楽

甘いものが悪者になる必要はありません。
選択肢を広げるだけで、心の回復力が上がります。


おわりに

落ち込んだとき、甘いものが欲しくなるのは、弱いからではなく心があなたを守りたいから。

甘いものは
・セロトニンを助け
・安心回路を呼び起こし
・過去の安心した記憶をつなぎ

“今のあなたを回復させる” 小さな道具です。

食べたい自分を責める必要はありません。
むしろ「今日も心が私を守ってくれているんだ」と、少しやさしく受け止めてあげてください。

あなたの心は、ちゃんとあなたを助けようとしています。


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