いわゆるツンデレというやつ?
はじめに
本当は好きなのに、なぜかそっけない態度を取ってしまう。
話しかけられると避けてしまったり、冷たい言葉を返してしまったり。
後になって自己嫌悪に陥り、どうして素直になれないのだろう」と悩む人も少なくありません。
いわゆる「好き避け」は、わがままでも駆け引きでもありません。
そこには、好きだからこそ起きてしまう心の反応があります。
この記事では、好き避けをしてしまう人の心の中で何が起きているのかを、心理の視点から丁寧に見ていきます。
好き避けは「嫌い」の反対ではない
まず大切なのは、好き避けは「嫌い」とはまったく別のものだということです。
好き避けをしてしまう人ほど、相手を強く意識しています。
だからこそ、近づくことが怖くなり、距離を取る行動が出てしまいます。
無関心であれば、相手の言動はそれほど気になりません。
しかし、好きな相手の言葉や態度は、一つひとつが心に残ります。
その影響力の大きさに耐えきれず、心が防御的になってしまうのです。
避けるという行動は、嫌悪ではなく、感情の大きさに対するブレーキだと考えると理解しやすくなります。
感情が大きすぎて処理しきれない
好き避けの背景には、感情の強さがあります。
嬉しい。
会いたい。
認めてほしい。
これらの感情が同時に湧き上がると、心は一時的に混乱します。
特に感情表現が得意ではない人ほど、その処理が追いつきません。
すると、感情を整理する余裕がないまま「一度距離を取る」という行動で心を落ち着かせようとします。
これは未熟さではなく、心が自分を守るための自然な調整です。
傷つく可能性を先に避けようとする心
好きになるほど、傷つく可能性も大きくなります。
拒絶されたらどうしよう。
変に思われたらどうしよう。
気持ちが知られてしまったら戻れないかもしれない。
こうした不安は、頭で考えるよりも先に、感情として反応します。
理屈では「考えすぎだ」と分かっていても、心は警戒を解きません。
好き避けは、未来の痛みを想像しすぎた結果、
今の安全を優先する選択として現れることが多いのです。
自分の価値に自信が持てないと起きやすい
好き避けは、自己肯定感とも深く関係しています。
自分の存在や魅力に確信が持てないとき、好意は安心よりも先に不安を連れてきます。
「こんな自分が好かれるはずがない」
「もし期待してしまって、拒まれたら立ち直れない」
「相手の期待に応えられなかったらどうしよう」
こうした思考は、意識していなくても心の奥で静かに繰り返されています。
そのため、相手から向けられる好意や優しささえも、喜びより先にプレッシャーとして受け取ってしまうことがあります。
自己肯定感が低い状態では、好意を向けられることは「選ばれた安心」ではなく「試されている状況」のように感じられます。
相手に近づくことは、自分の欠点や弱さが露わになる行為のように思え、無意識のうちに防御反応が働きます。
その結果、相手の前では自然体でいられず、言葉を選びすぎたり、態度がぎこちなくなったりします。
そして最終的に、避けるという行動を選ぶことで「これ以上傷つかない距離」を保とうとします。
好き避けは、相手を拒んでいるのではありません。
自分自身を守ろうとする行動が、たまたま避ける形で現れているだけなのです。
素直になること=弱さだと感じている場合もある
好き避けをしてしまう人の中には、
「感情を見せると主導権を失う」
「本音を出すと傷つけられる」
という信念を持っている人もいます。
この価値観は、過去の経験から身についたものかもしれません。
一度でも、素直になって傷ついた経験があると、心は同じ失敗を繰り返さないように学習します。
その結果、好意を隠すことが、自分を守るための賢い戦略として残るのです。
好き避けは「関係を壊したくない」気持ちの裏返し
一見すると逆の行動に見えますが、好き避けの根底には「この関係を失いたくない」という強い気持ちがあります。
嫌われたいわけでも、距離を置きたいわけでもありません。
むしろ、その人とのつながりを大切に思っているからこそ、慎重になってしまうのです。
今の関係が壊れるくらいなら、好意を伝えず、踏み込まず、少し距離を保った方がいい。
そう考えることで、心は一時的な安定を得ます。
期待もしなければ、失望することもない。
踏み出さなければ、拒絶されることもない。
この選択は、消極的に見えて、実はとても切実です。
相手を失う未来を想像するだけで耐えられないため「何も起こさない」という方法で関係を守ろうとしています。
好き避けをしてしまう人にとって、関係は賭けではありません。
壊れる可能性のあるものには、できるだけ触れない。
その方が安全だと、心が判断しているのです。
だから好き避けは、関係を軽んじているから起きるのではありません。
大切に思いすぎて、失うことを恐れすぎている状態です。
慎重さが強くなりすぎた結果、距離を取るという形でしか感情を扱えなくなっているだけなのです。
私の意見や感じたこと、過去の体験から
ここからは、私自身がこのテーマについて感じてきたことを書きます。
好き避けをしていた頃、私は「自分は冷たい人間だ」と思っていました。
しかし後から振り返ると、
本当は感情が溢れるのが怖かっただけだったのだと気づきました。
心理学を学ぶ中で、感情を避ける行動は、未熟さではなく防衛の一形態だと知りました。
この理解があったからこそ、自分を責める気持ちが少しずつ減っていきました。
好き避けをしている自分への向き合い方
もし、自分が好き避けをしていると気づいたとき、無理に態度を変えようとしなくても大丈夫です。
まずは、
「私は何が怖いのか」
「この行動は何を守っているのか」
を言葉にしてみてください。
行動を直すより先に、気持ちを理解することが、結果的に一番やさしい変化につながります。
おわりに
好き避けは、矛盾した行動に見えるかもしれません。
けれどその奥には、深い好意と不安、そして誠実さがあります。
避けてしまう自分は、不器用なだけで、冷たいわけではありません。
心の動きを理解できたとき、少しずつ、自分にも相手にも無理のない距離感が見えてきます。
好き避けは、心が動いている証拠です。
その事実を、どうか否定せずに受け取ってください。
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