なぜ赤ちゃんは泣くことでしか伝えられないのか

04. 子どものこころ・赤ちゃんの気持ち

基本的欲求・未熟な脳と安心のサイン

はじめに

赤ちゃんが突然泣き始めると、どうしていいのか迷ってしまう瞬間があります。
ミルクも飲んだ、おむつも替えた、抱っこもした。
それでも泣き止まないと「何が正解なの?」と不安になるかもしれません。

でも実は、赤ちゃんにとって泣くことは“困っている”以上の意味を持つ、大切なコミュニケーションです。
脳が未発達で言葉も行動の手段も限られている赤ちゃんは、泣くことで自分の存在を知らせ、安心を求め、世界に助けを求めています。

この記事では、赤ちゃんがなぜ泣くしかできないのか、その理由を脳の発達・心理・愛着形成の視点からやさしく解説します。
不安や疑問が少しでも軽くなり、赤ちゃんと向き合う時間が“わかり合える瞬間”に変わりますように。


赤ちゃんが“泣くしかできない”理由:脳と心理のしくみ

赤ちゃんは泣くことで全てを伝えます。
泣くのはわがままでも甘えすぎでもなく、脳の発達段階から見ても最も自然で合理的な行動です。

まだ使える表現手段が限られている

赤ちゃんは多くの感情を持っていますが、それを整理したり表情や言葉で伝える脳の部分、前頭前野が未発達です。
大人なら「眠い」「寂しい」「不快」などを区別できますが、赤ちゃんは“何かが違う”という感覚しかわかりません。
そのためすべての不快や不安が“泣く”という一つの行動にまとまります。

泣くことは生存本能

赤ちゃんは自分ひとりでは生きられません。
だからこそ、周囲の大人に「今の私は助けが必要です」と知らせるための最も効果的な手段が泣くことです。

泣くことで大人を呼び寄せ、ケアを受けられ、生存確率が上がる。
進化の視点から見ても、泣くという行動は合理的です。

泣くこと自体が“心の調整”になっている

面白い研究があります。赤ちゃんは泣くことで呼吸が安定し、自律神経が整うことがあるというものです。
つまり泣くことは、赤ちゃんの自己調整の一つでもあります。

気持ちを落ち着ける方法をまだ持たない赤ちゃんにとって、泣くという行為は心を整える重要なプロセスなのです。

泣き声は“安心を求めるサイン”でもある

身体的な不快だけでなく、赤ちゃんは「見ていてほしい」「そばにいてほしい」という理由でも泣きます。
愛着形成の研究では、赤ちゃんが泣くのは“この人は私に応えてくれるかな?”という確認作業だと言われています。
誰かに応えてもらった経験は、後の人間関係や自己肯定感の基盤になります。


身近な例:泣きやまない理由がわからなかった日のこと

私自身、子どもがいるので赤ちゃんのお世話はしてきました。
また、親戚が多いので、その赤ちゃんを見ていることも。

抱っこしても授乳しても、おむつを替えても泣き止まない日がありました。
大人全員で「暑いのかな」「眠いのかな」と理由を探しても、ぴたりとは当てはまりません。

しばらく試しているうちに、その子は抱っこで歩いている時だけ少し泣き声が弱くなりました。
揺れのリズムが合ったのか、胸の音が安心につながったのか、そのまま呼吸が整い、目を閉じて眠りました。

その瞬間に強く感じたのは、“泣き止ませる正解”を当てる必要はないということでした。
赤ちゃんはただ安心したかっただけで、その安心は完璧な対応ではなく、大人がそばにいるという気配から生まれるものだったのです。

この体験を通して、赤ちゃんの泣き声は“理由を特定して正しく対処するための問題”ではなく“心で受け止めるメッセージ”
なのだと実感しました。

といっても、泣き止まないと心配になりますよね。
神経質にならなくても大丈夫、何をしても、泣き止まない時は泣きやみません。
見える位置で、そっと寝かせて見守るのも手です。


大人ができること:赤ちゃんの泣きに寄り添うヒント

赤ちゃんの泣きは、必ずしも完全に理解できなくても大丈夫です。
大切なのは、泣き声に対して “応えてみる姿勢” です。

① 「泣く=悪いこと」ではないと知る

赤ちゃんは泣くことで世界とつながっています。
泣くことは未熟さの証ではなく、成長の過程そのものです。この視点を持つだけで、泣き声のストレスが少し軽くなります。

② 抱っこや声かけは“安心のサイン”

抱っこ、ゆっくり歩く、優しく声をかける、背中をなでる。
これらは単なる行動ではなく、赤ちゃんに「あなたは一人じゃないよ」と伝える大事なメッセージです。

赤ちゃんにとって、
声のトーン
肌のぬくもり
あなたの匂い
呼吸のリズム

はすべて安心の材料です。

③ 理由を一つに絞らなくていい

赤ちゃんが泣く理由は複数重なっていることが多いです。
例えば
眠い+暑い
不快+寂しい
刺激で疲れた+甘えたい

という組み合わせもよくあります。

“これ!”と一つの理由を当てようとすると大人が疲れてしまうので、
「今は安心したいんだな」くらいで大丈夫です。

④ 泣きやまない時に見直すポイント

・室温と湿度
・お腹の不快感
・衣服の締めつけ
・刺激量(音、光、におい)
・体調の変化

これらを確認しながら、無理のない範囲でケアしていきます。
どうしても不安な時は、医療機関や地域の育児相談などを頼ってOKです。

というか、不安を感じたら人に頼ってください。
一人で抱え込むものではありません。

⑤ 大人自身のケアも大事

赤ちゃんの泣き声は、大人の自律神経にも影響を与えます。
しんどい時は、
深呼吸を数回する
数分だけ席を離れる
他の大人と交代する

など、自分の心を守る時間を作ることもとても大切です。

「泣いている赤ちゃんを前に休むなんて」と思う必要はありません。
むしろ大人が落ち着いているほど、赤ちゃんも安心しやすくなります。


まとめ

赤ちゃんが泣くのは未熟だからではなく、自分を守るための大切なコミュニケーションです。
脳が発達途中で、自分の感情を整理する方法をまだ持たない赤ちゃんは、泣くことで安心を求めています。
理由が特定できなくても、完璧な対応でなくても、泣き声に応えようとする姿勢こそが赤ちゃんにとっての安全基地になります。


私自身の気づき

この記事を書きながら、赤ちゃんの泣き声は“助けてほしい”だけではなく“あなたを必要としています”というメッセージでもあることを改めて感じました。

泣くことは赤ちゃんの世界の中心にある行動で、そこには大人が想像する以上に深い安心のやり取りが隠れています。
泣き声の背景にある気持ちに少しでも近づけたら、赤ちゃんとの時間はもっと穏やかでやさしいものになると思います。


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