怖がりな人と平気な人の違い

08. 心理エンタメ

扁桃体がつくる「恐怖の感じ方」

はじめに

同じ映画を観ても、同じ怪談を聞いても、人によって反応は大きく異なります。

「怖くて途中で目を閉じてしまう人」
「むしろ楽しめる人」
「怖いけれど見続けられる人」

この違いは、気合いや根性の問題ではありません。
実は、脳の仕組みと反応のクセによって生まれています。

怖がりな自分を「弱い」と感じてしまう人もいますが、その反応はとても自然で、生物として理にかなったものです。
ここでは、怖がりな人と平気な人の違いを、脳の働き、とくに扁桃体を中心に見ていきます。

以前、ホラー映画について書きました。
こちらと関連しているので、覗いてみてくださいね。


恐怖を判断する中枢は「扁桃体」

恐怖を感じるとき、中心的な役割を担っているのが扁桃体です。

扁桃体は、
・これは危険か
・今すぐ身を守る必要があるか

を瞬時に判断する役割を持っています。

特徴的なのは、その判断の速さです。
視覚や聴覚から入った情報は、一部が思考を司る前頭葉に届く前に、直接扁桃体に送られます。

そのため、
「考える前にゾッとする」
「理由は分からないけれど怖い」

という反応が起こります。

これはバグではなく、命を守るために進化してきた仕組みです。


怖がりな人は扁桃体が反応しやすい

怖がりな人は、扁桃体が刺激に対して敏感に反応しやすい傾向があります。

・突然の音
・暗闇
・正体が分からないもの
・過去の嫌な記憶と似た状況

こうした刺激に対して、扁桃体が「危険の可能性あり」と素早く判断します。

すると、
・心拍数が上がる
・呼吸が浅くなる
・身体がこわばる

といった反応が起こります。

これは恐怖に弱いのではなく、危険察知の感度が高い状態です。


記憶と恐怖が結びつきやすい理由

怖がりな人は、恐怖の記憶と感情が結びつきやすい傾向もあります。

扁桃体は、記憶を司る海馬と強く連動しています。
そのため、過去に怖い思いをした場面と似た刺激に出会うと、実際に危険がなくても、身体が先に反応してしまいます。

「前にも怖かった」
「また同じことが起きるかもしれない」

こうした反応は、慎重さや予測力の高さとも言えます。


平気な人は「前頭葉のブレーキ」が強い

怖さを感じにくい人も、実は扁桃体が働いていないわけではありません。

違いは、その後に働く前頭葉のブレーキ機能です。

前頭葉は、
・これは映像だ
・今は安全だ
・現実の危険ではない

と状況を整理します。

このブレーキが早く入る人は、恐怖が長く続きません。
一瞬ゾッとしても、すぐに理性が上書きするため「平気だった」と感じやすくなります。


慣れと経験が恐怖反応を変える

恐怖の感じ方は、生まれつきだけで決まるものではありません。

・怖い体験を何度もした
・安全だった経験を重ねた
・恐怖に慣れた

こうした経験によって、扁桃体の反応は変化します。

たとえば、最初は怖かったホラー映画でも、何度も観るうちに平気になることがあります。

これは「怖いけれど危険ではない」という情報を脳が学習するからです。


怖がりな人ほど想像力が豊か

怖がりな人は、状況を想像する力が高いことが多いです。

・もしこうなったら
・次に何が起きるか
・最悪の場合は

こうした想像が自然に浮かびます。
そのため、実際には起きていないことにも、身体が先に反応することがあります。

これは欠点ではなく、創造性や共感力とも深く関係しています。


怖がり=弱さではない

怖がりな人は、感情や環境の変化に敏感です。

それは、
・危険回避能力
・他人の感情を察する力
・細かな変化に気づく力
が高いことでもあります。

恐怖を感じやすいのは、生き残るために重要な能力でもあります。


私の考えや感じたこと、体験から

私は自分を、はっきりと怖がりなタイプだと思っています。
突然の音や、暗い場所、現実と地続きに感じられる怖さは、今でも少し苦手です。

けれど、不思議なことに、小説や漫画のホラーは平気です。
むしろ、好んで読むこともありますし、自分でホラー小説を書くことさえあります。

この違いに、以前は少し戸惑っていました。
「怖がりなのに、なぜ平気なのだろう」と。

考えてみると、そこには大きな差がありました。
それは、現実との距離感です。

映像や音、突然の刺激がある恐怖は、身体が先に反応してしまいます。
扁桃体が「今ここで起きているかもしれない危険」として受け取るからです。

一方で、小説や漫画の世界は、ページの向こう側にあります。
怖さは感じるけれど、それが「今の自分を脅かすものではない」と、どこかで分かっています。

ホラー小説を書くときも同じです。
怖さを作り出しているのは自分であり、その構造や心理を眺めている感覚があります。
そして、私はその先を知っているし、操作もできてしまう。

恐怖に飲み込まれるのではなく、恐怖を観察している側にいる。
だからこそ、安心して向き合えるのだと思います。

この経験から感じたのは、怖がりかどうかと、ホラーが好きかどうかは別だということです。

怖がりな人ほど、感情の動きや不安の形に敏感です。
だからこそ、その揺れを言葉にしたり、物語にしたりできる。

怖がりであることは、ホラーを遠ざける理由ではなく、むしろ、ホラーを深く理解する入口なのかもしれない。
私は今、そんなふうに感じています。


おわりに

怖がりな人と平気な人の違いは、性格の強さや根性の差ではありません。

扁桃体の反応の敏感さと、前頭葉の調整の仕方の違いです。

怖さを感じる自分を、無理に変えようとしなくて大丈夫です。
その反応は、あなたの脳があなたを守ろうとしている証でもあります。

怖がりな自分を責めるより「そう感じる仕組みがある」と知ることで、少し安心できるかもしれません。


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