人はなぜ「分かっているのにやめられない」のか
はじめに
もうやめたいと思っているのに、同じ失敗をしてしまう。
同じパターンの恋愛を選んでしまう。
同じことで悩み、同じところで立ち止まる。
「次こそは違う行動をしよう」
そう決めたはずなのに、気づけばまた同じ道を歩いている。
多くの人が、この感覚に覚えがあります。
これは意志が弱いからでも、学習能力が低いからでもありません。
むしろ、人の心と脳の仕組みとして、とても自然な現象です。
脳は「慣れた行動」を好む
人の脳は、基本的に新しいことよりも、慣れた行動を選びます。
それは楽をしたいからではなく、エネルギーを節約するためです。
一度身についた行動パターンは、考えなくても実行できる状態になります。
脳にとっては、そのほうが安全で効率的です。
たとえ結果が良くなくても「知っている失敗」のほうが「未知の選択」より安心だと判断されることがあります。
嫌な結果でも繰り返してしまう理由
不思議なのは、繰り返している行動が、自分を苦しめていると分かっている場合です。
それでも人は、同じ行動を選んでしまいます。
これは、脳が結果よりも予測可能性を重視するからです。
同じ行動をすれば、
・どういう展開になるか
・どんな気持ちになるか
・どこで傷つくか
が、ある程度予測できます。
一方で、新しい行動には、予測できない不安がつきまといます。
脳はその不確実さを危険とみなし、無意識のうちに回避しようとします。
感情が行動を固定してしまう
行動は、理屈だけで決まっているわけではありません。
そこには必ず感情が関わっています。
たとえば、
・不安になると連絡を取りすぎてしまう
・寂しいと過去の相手に戻ってしまう
・緊張すると避けてしまう
これらは、その瞬間の感情を和らげるための行動です。
短期的には、少し楽になります。
しかし、長期的には同じ苦しさを繰り返します。
それでも脳は「一時的に楽になった」という記憶を強く残します。
その結果、同じ行動が選ばれやすくなります。
繰り返しは「学習」でもある
同じ行動を繰り返すことは、必ずしも悪いことではありません。
それは、脳が「この行動には意味がある」と学習している状態です。
問題は、その学習が今の自分に合っているかどうかです。
過去には必要だった行動でも、今の状況では不要になっていることがあります。
それでも脳は、更新されない限り、同じ反応を続けます。
なぜ「やめよう」と思うだけでは変われないのか
人はよく、
「次は気をつけよう」
「もう同じことはしない」
と考えます。
しかし、思考だけでは、行動はなかなか変わりません。
なぜなら、行動は感情と結びついているからです。
感情が同じ状況で同じように動く限り、行動もまた同じ形を取ります。
そのため、行動を変えたいときは「なぜその行動をしているのか」という感情の役割に目を向ける必要があります。
私の考えや感じたこと、体験から
私自身も「また同じことをしている」と気づいて落ち込んだ経験があります。
頭では分かっているのに、感情が動いた瞬間、いつもの選択をしてしまう。
無難な方を選ぶこと。
間違いなく正しいと思う方を選ぶこと。
少しくらいなら大丈夫と悪手を選ぶこと。
想像ができるのに、今回は違うかもと選ぶこと。
でもこの仕組みを知ってから、自分を責める気持ちは減りました。
それは、繰り返しが怠慢ではなく、心が自分を守ろうとした結果だと分かったからです。
大切なのは、やめることよりも、その行動が何を守っていたのかを理解することだと感じています。
繰り返しから抜け出すための視点
行動を責めるほど、心は同じ場所に戻ろうとする
同じ行動を繰り返してしまうとき、多くの人はまず自分を責めます。
「またやってしまった」
「どうして学ばないんだろう」
そうやって無理に変えようとすると、心には強い抵抗が生まれます。
なぜなら、その行動は心を守る役割を果たしてきたからです。
急に奪われそうになると、心は元の行動にしがみつこうとします。
繰り返しは弱さではなく、生き延びるために選ばれてきた方法でもあります。
その行動は、どんな感情を和らげていたのか
行動を変える前に見るべきなのは「なぜそれをしていたのか」ではなく「それによって、どんな感情が軽くなっていたのか」です。
例えば、
・不安を感じないようにするため
・拒絶される可能性を避けるため
・誰かに認められている感覚を得るため
同じ行動でも、人によって和らげている感情は違います。
行動の裏にあるのは、感情の処理です。
安心・回避・承認という三つの役割
繰り返されやすい行動は、多くの場合、次のどれかの役割を担っています。
・安心を得る
・傷つく可能性を回避する
・承認やつながりを感じる
これらはどれも、人にとって必要な感情です。
問題なのは感情そのものではなく、扱い方が一つに固定されていることです。
行動ではなく、感情の置き場を変える
繰り返しから抜け出すために必要なのは、行動を我慢することではありません。
「この感情を、他の方法でも受け止められないか」
そう問い直すことです。
安心を、別の形で得られないか。
回避せずに、少しずつ距離を取れないか。
承認を、自分の中でも感じられないか。
行動を変える前に、感情の置き場を増やすこと。
それが、同じ行動に戻らなくても大丈夫になるための土台になります。
繰り返しは、やめるものではなく卒業するもの
繰り返しは、無理に断ち切るものではありません。
役割を終えたとき、自然に必要なくなっていきます。
「もうこの方法で守らなくても大丈夫かもしれない」
そう感じられた瞬間が、卒業のサインです。
変わろうとしなくていい。
理解することからで、十分に前に進んでいます。
おわりに
つい同じ行動を繰り返してしまうのは、あなたが弱いからではありません。
それは、脳と心が、これまでの経験をもとに、最善だと判断してきた結果です。
もし変わりたいと思ったなら、まずはその行動を責めるのではなく「なぜ必要だったのか」を問い直してみてください。
繰り返しは、失敗ではなく、理解されるのを待っているサインなのです。
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