「おそくなってごめんね。今からてらすよ、リィナのまちを」
お月さまはそう言って、目をつむりました。すると、お月さまのからだが、どんどんと明るくなっていきます。
「すごいよ! キレイ!」
お月さまのからだが光ると、リィナの町も明るくなりました。空はくらいのに、月明かりにてらされたそこは、じんわりとやさしくうつしだされていました。
「リィナ!」
「あっ! おかあさん!」
ずっとずっととおくの方から、リィナをよぶ声がします。その声のぬしは、リィナの大好きな大好きな、リィナが夜を見せたかったおかあさん。
「おかあさん! リィナ、夜をつれてきたよ!」
小さな小さなおかあさんにむかって、リィナはさけびました。
「ボクが下までつれていってあげるよ」
「わたしも下までつれていってあげるわ」
お星さまは、リィナとガルーダをつれて、下へ下へととんでいきました。たくさんの他のお星さまがずっと少なくなり、お月さまがとおくに見えるようになったころ、かわりに地めんが近づいてきました。
「リィナ! リィナ!」
「おかあさん! ただいま!」
リィナは地めんにトンっとおり立ちます。ずっとリィナのことを待っていたおかあさんの目にはなみだがうかんでいました。
「おかあさん、あのね、リィナね……」
「わかってる、わかっているわリィナ。ありがとう。こんなにステキな夜を見せてくれて」
「すごいでしょ? かみさま、わすれてたんだって。でも、ごめんなさいしたから、いいよね?」
リィナは、さっきまで自分がいた空を見つめながら言いました。
ポツ、ポツと、村の家に明かりがともります。もれる明かりがそれはまたキレイに見えました。
「リィナ、帰ろう、帰って……その、うしろの大きな鳥はなんだい……?」
「ガルーダさんだよ! やさしいんだよ! リィナがかみさまのところに行くのに、ついてきてくれたの」
「──キィィィィイ」
ガルーダはひとなきすると、そのばにすわりこみました。
「……おい! ソイツは……」
「ダメだよおじさま! こわがらせないで!」
「いや、その……すまなかった。何もしていないのに、ひどいことを言って」
おじさんは、ガルーダへちかよると、おそるおそるその羽をなでました。ガルーダは目をつむり、そっと身をゆだねました。
そう、何もこわいことはないのです。ただ人が見たら、大きくて強そうに見えるだけなのだから。その見た目だけでは、中身はわからないですからね。
リィナはおかあさんといっしょに、家へと帰りました。
ガルーダは、村にすむことになりました。ひとりぼっちはさみしいだろうから、と、村人が広場に小屋をたて、めんどうを見ています。
この、リィナが夜をさがしに行った日から、リィナのすむ町には、夜が来るようになりました。かみさまのごめんねのしるしに、毎日、たくさんの星をうかべて。