◆リィナ①◆かみさまと夜

リィナとよるのないまち

 くもくんのお母さんは、どんどんとにじにそって空の上の方へとんで行きます。すけていたにじも、上の方はこくハッキリとした色に。

「にじってかたいのね」

 リィナは手をのばして、にじにさわってみました。七色のにじはとてもキレイで、サラサラと気持ちの良い手ざわりです。
 コンコン、とノックをしてみると、コンコン、と、かたい音がかえって来ます。

 リィナは、くもくんのお母さんの上で、たくさんのお話をしました。

 自分のすむ町には、夜がないこと。お母さんに、また夜を見せてあげたいこと。お月さまとお星さまを見てみたいこと。
 そして、大人が『わるい』と言う、このガルーダは『良い子』であること。

「どうして大人は、なんでも『決めつけ』ちゃうのかしら」
「そうね。むずかしいけど、リィナちゃんも、大人になったらきっと分かるわ」

 くもくんのお母さんは、こまったたように笑いながら、リィナに言いました。まだまだ、リィナには分からないことがたくさんあります。
 どうして、くもくんのお母さんが、こまっているのかもわかりません。

「リィナちゃん! もうすぐ、かみさまのおうちにつくよ!」
「わぁ! ほんとう? すごく楽しみ!」

 リィナはワクワク。ガルーダもワクワク。そんなリィナとガルーダを見て、くもくんと、くもくんのお母さんもワクワク。

「ホラホラ、あの大きいの! あれがかみさまのお家だよ! ちょうどにじの真ん中。くもにかくれる所。あれだよ」

 くもくんがまっすぐみる先には、大きな大きなおしろが。それはくもで出来ているのか、なんとなく、ユラユラとゆらいでいるように見えました。

 ゆっくりとおしろに近づいて、ふんわりと地めんにおり立ちます。くもで出来た地めんは、やさしくリィナの足をうけ止めてくれました。ポフポフとふみしめると、ふしぎな感じがしました。

「ここでおわかれかしら。それじゃあね、リィナちゃん」
「ありがとう、くもくんのお母さん!」

 そのよこで、くもくんはモジモジ。何か言いたそうです。リィナとガルーダを見ては、目をそらします。そして、また見つめてのくりかえし。

「どうしたの? くもくん」
「あのね、えっとね……」

 くもくんは、がんばって言いました。

「リィナちゃんは、ガルーダとお友だちなんてすごいね。人間はみんなこわがるのに」
「ガルーダさんはこくないよ? とってもやさしいの!」
「そっか……。ねぇ、ボクもお友だちに、リィナちゃんとガルーダさんとお友だちになれるかなぁ?」
「なれるよ! ……あれ? もう、お友だちじゃあないの?」

 リィナは首をかしげました。まいごのくもくんを見つけて、ガルーダさんとくもくんのお母さんをさがして。もう、とっくに友だちだと思っていたからです。

「あっ……! そっか。いっしょにお母さんをさがしてくれて、もうお友だちね!」
「そうだよ! もうお友だちだよ!」

 くもくんは、すがたのちがう自分が、お友だちになれるのか、と、心ぱいをしていました。でも、リィナとガルーダにとって、そんな心ぱいはいらないものだったのです。

 すがたがちがっていたって、同じしゅるいじゃあなくたって、友だちになるのはカンタンなのだから。

「夜がま町に来たら、くもくんもあそびに来てね! 待ってるよ!」
「うん! かならず行くよ!」
「ぜったいだよ! それじゃあ、さようなら!」
「さようなら、リィナちゃん!」

 リィナは、くもくんとくもくんのお母さんと、今どこそおわかれをします。

 ちょっぴりくるしくて、むねがキュッとなりました。けれど、また会えることを考えたら、じんわりとあたたかく、やさしい気持ちになりました。

 何どもふりかえるくもくんに、たくさん手をふって見えなくなったころ。リィナとガルーダはくるりとむきをかえて、かみさまのおしろをノックしました。

「かみさま! こんにちは!」

 リィナは元気よくあいさつをします。しばらく待っていると、中からガチャリ、とドアをあける音がしました。

「だれじゃね? めずらしいのう、こんな所におきゃくさんなんて……」
「はじめまして、かみさま! リィナはリィナ。夜をさがして、かみさまのところに来たの!」
「夜……? あぁ、あぁ! あの町にすむムスメさんかのう。入りなさい」

 真っ白なヒゲを、手のひらでなでながら、リィナたちをむかえてくれたのは、ニコニコと笑うおじいちゃんでした。せはちいちゃくて、ぽよんぽよんと、まるまるとした体です。

「オレンジジュースでいいかのう。ほら、クッキーも食べなさい」

 リィナとガルーダをおうちに入れ、ジュースとおかしをふるまいました。おいしいジュースとおかしに、リィナもガルーダもニッコリ。

「それで、夜をさがしに来たんじゃったな。すまないのう。リィナちゃんの町に夜をわたす前に、ケガをしてしまって。それでなぁ、その……」

 かみさまは、なんとなく言いにくそうです。

「そのままリィナちゃんのまちに、夜をわたすのを、すっかりわすれておったんじゃ」
「えー!? かみさまわすれていたの!?」

 まさか夜をわすれていたなんて、リィナもビックリ。わっはっはとわらうかみさまを見ていると、なんだかリィナもおもしろくなって、思わずわらってしまいました。

「長い間、夜がなくてふべんじゃったろう。今から、夜をわたしに行くぞい!」
「やったぁ! 夜に会えるのね!」
「夜にはもとがあってのう。それがこれ、こっちじゃ」

 かみさまは手まねきをして、リィナとガルーダを別べつのおへやにあんないしました。
 そこにあったのは、大きなガラスのビン。中には、黒や赤、むらさきやふかい青、オレンジが顔を見せる、ふしぎな色のえき体でした。

「これは夜の絵のぐをとかした、夜のもと、じゃよ。これを空の上からふりまくんじゃ」

 ずっと見ていてもあきなくて、なんだかすいこまれそうな、そんな夜のもと。

「リィナちゃんとガルーダも、手つだってくれるかね?」
「もちろん!」
「キィィイ!」

元気よくへんじをします。
こうして二人は、かみさまのお手つだいをすることになりました。

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