人を殺めた僕。一人、二人、きっと数え切れない。
僕は罪を犯した。それでも誰かと繋がりたかった。
僕に出来た友達。
生まれた時から、暗殺者として育てられた。そのことに、疑問は持たなかった。『当たり前』だったから。
僕と同じ、生まれた時から、暗殺者として育てられたハヅキ。
王の妾の子として産まれ、王子の影武者として育てられた、キサラギ。
暗殺の道具として、幼い頃から扱われてきたミナヅキ。
皆きっと、家族だった。そして間違いなく、友達だった。
『ありがとう。ハヅキも元気で』
そう言ってハヅキと別れた。ハヅキは笑って仕事に出向き、その後一度も姿を見ることはなかった。
『幸せを、祈ってる』
そう言ってキサラギと別れた。キサラギは王子の代わりに、劇薬を飲み込み身体を失った。
ミナヅキは闇に生きる民に娶られ、族長の命と引き替えに、記憶と自由を失った。言葉を交わすことも無く。そんなミナヅキとの別れ。
僕が側に居れば良かった。そうしたら、もしかしたら、違う未来があったのかもしれない。
きっと悩んでいただろうのに。僕が皆を送り出した。引き留めることはしなかった。僕の周りにはもういない。
かつての仲間でかつての友。
日々の生活の中で、ふと虚しくなる瞬間がある。
『引キ止メナクテ──良カッタノ──?』
そう問い掛ける自分。
『コレデ──良カッタンダヨ──』
そう答える自分。
今でも聞こえる、懐かしい声。光の見えない三人が。「幸せ」になれますように。
どうか。ドウカ。
ハヅキが。
キサラギが。
ミナヅキが。
幸せで、ありますように。
アナタが僕の幸せを祈ってくれたように。僕もアナタの幸せを祈っているから。
自分が選んだ道を、後悔しないで。その時はきっと。僕も後悔してしまうから。
いつかまた。きっと。そう、きっと。
また会う日が来るだろう。その日まで。
サヨウナラをしよう。少しだけ。ほんの少しだけ別れを。
振り返らないで、そのまま歩いて。また、会う日まで。
サヨウナラ。だね。