いつも連絡は私からだった。
大好きだから会いたくて。大好きだから繋がっていたくて。
たまたま、俯いて歩いた日。気分も乗らず、ただ誰かに甘えたいとか、そんなことを考えていた。
毎日に疲れていたんだろう。些細なことでも、私には重たく感じた。
「大丈夫?」
廊下ですれ違うとき、彼に声をかけられた。
「んー、大丈夫。自分の方が大変じゃん?」
いつも通り笑ったつもりだった。でも、笑えていなかった。
「大丈夫じゃないよね?」
彼は眉をひそめて言った。
「えっ、そんなことないよ?」
しまった、と思った次の瞬間には、色んな事がどうでもよくなっていた。力が抜ける。きっと無表情だろう。
けれど。
大丈夫。まだやれる。
「無理すんなよ?」
彼がぽんぽん、と、私の頭に触れた。
「……え?」
驚いて顔を上げる。
「心配なんだよ」
そう言いながら、右手で私の頭を撫でる。
「うん……ごめん」
少しだけ期待した。いつもと違う日常を。彼にとっては些細な出来事かもしれない。
でも、私にとっては…
私の願い。
両手で彼の左手の指を掴む。
「有り難う」
「ん」
そう言って、ゆっくりと彼は私の手を握り返した。
幸せな瞬間。
どうか、この先も続きますように。