第79話:【回想】覚悟② (あの時、一番好きだった君に。)

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 バイトから帰り、急いでベッドへと潜り込む。落ち着かない。もやもやする。悩ましい。

「あーもー……どうしよっかなぁ……」

 今日航河君の話を聞いて思った。美織さんの時は思わなかった気がするが、航河君に彼女が出来たら嫌だ。
 きっと、美織さんの時はもう既に彼女がいたのと、航河君のことを縛ることなく付き合っていたから、気にならなかったのだと思う。

「誰かと付き合う……か……」

 想像してみては横に首を振る。航河君が他の誰かと付き合うだなんて、この先あって欲しくない。自分でも随分な我儘だと思うが、それが本心だ。
 ──だからと言って、自分と付き合うというのもイメージが湧かない。航河君のことは大好きで、誰とも付き合って欲しくはないが、自分が告白するかとなると、それも何かが違った。

「好きなんだけど……」

 ……そうか。私は航河君のことが好きだが、前面に『振られることが怖い』とか『関係が崩れることが嫌だ』という気持ちが出てしまっているのだろう。
 実際そうだし、今の状態の居心地が良い。けれど、彼女が出来た時、私の存在が邪魔になることも分かっていた。

 それで距離が離れるくらいなら、告白してしまおうか。心の何処かに、少しだけ期待もあった。告白したら付き合えるのではないか、と。

「あー……広絵に電話」

 広絵は私がバイト先に入るまで、おそらく一番航河君と仲の良かった女性だ。何かしらアドバイスをくれるかもしれない。私が航河君を好きなことはとっくに知っている。

「……あ、もしもし広絵?」
『千景? どうしたの?』
「いやー、ちょっと相談」
『なになに?』
「航河君のことなんだけど」
『航河? あー! そうそう! 広絵も聞こうと思ってたんだけど』
「え? 何?」
『あんた達いつになったら付き合うの?』
「えぇ!? 何それ!」
『いや、だってそうでしょう。皆実は付き合ってると思ってるよ』
「付き合ってないし」
『だから、いつ付き合うのって』
「いや、それは、その」
『じれったいなぁ。告白すればイイじゃん』
「……それを相談しようかと思っていたの」
『告白一択!』
「早い!」

 広絵はいつもハッキリ言う。遠慮がない。それが広絵の好きなところでもあるのだが、今回はもう少し悩みたいとも思っていた。

『まーでも、女の子としては向こうから告白して欲しいよね』
「そう思うけどさ、航河君私のこと異性として見てないと思うんだよね」
『何で? その割には一緒にい過ぎだし、航河は千景に干渉し過ぎじゃない? 男の子と出掛けるのに何か言ったり、ついてきたりとかって、いくらその相手を知っていてもないと思うよ? 好きじゃなきゃ』
「……私もそうは思うんだけど、でも何かが違う気がするんだよね」
『えーでも、千景が彼氏作ったら、きっと航河文句言うよね?』
「多分?」
『これで好きじゃないなら、航河の感覚がおかしいって』
「……うん」
『だってさ、皆付き合ってると思うくらいなのに、好きじゃありませんとか言われたら酷いと思うんだけど』
「有り得そう」
『えー? じゃあ何でそんな口出すのだし、誘ってくださいみたいな言い方するの? 2人でしょっちゅう出掛けてるじゃん』
「わかんない」
『航河の所有物みたいだもん。千景』
「所有物って」
『ホントそんな感じ。好きじゃなきゃ調子乗ってるな、航河の奴』
「そう見える?」
『見える見える。千景が何にも言わないから、甘えてる感じ』

 ダメだ、相談したら余計に混乱してきてしまった。

『千景は、航河に新しい彼女出来たら嬉しい?』
「……嬉しくない」
『それが答えなんじゃないの?』

 分かっている。

『次会った時、彼女で来たって言われて平気? 言わない間に、航河に好きな人が出来るかもしれないし、また告白されるかもしれない。心変わりしたら、付き合うかもしれないよ』
「……あ。そっか……」

 ……そうだ。それは嫌だ。私はきっと後悔するから。

「……告白してみるよ」
『うん。ファイト!』
「有り難う」

 宣言してしまった。遂に、告白することを。