第67話:【現在】予想外の告白② (あの時、一番好きだった君に。)

スポンサーリンク

「私、あんまり上手く喋ることが出来なくて。女性は平気なんですけど。高校大学と女子しかいなくて、男性にはあまり慣れていなくて……」
「うん、緊張しちゃうんだよね?」
「はい。だからどう接して良いのかもよく分からなくて。……でも、そんな私とも、ちゃんと喋ってくれるというか、気にせずに自分が喋れるな、と思える人が出来て」
「そっか。それは、良いことだね」
「私が素っ気ない話し方をすると、リーダーとか『沢木さんに嫌われた―!』とか言うじゃないですか。ああいうのも苦手で。そんなつもりじゃないのに」
「……リーダーも冗談だと思うけどね。今度、言っておくよ」
「有り難うございます。……でも、そんなことも言わないし、そのまま話してくれるし」

綾ちゃんは恥ずかしそうに、モジモジしながら私に教えてくれた。こちらを向いていた顔も、段々と下を向いて聞き、普段より声も小さくて慣れていない感じがする。時々、言おうとしたことをやめては、キョロキョロしながら考えて、また一からたどたどしく口を開く。
それでも、綾ちゃんは一生懸命その話を私にしてくれた。私を頼ってきてくれているのだ。こんなに頑張って話してくれているのだから、私に出来ることが少なかったとしても、全力でそれに報いたい。

まだ、綾ちゃんの話してくれる内容だけでは、それが誰なのか分からなかった。会社の人間かもしれないし、そうでないかもしれない。私の知らない綾ちゃんだっているのだから。

「段々と、その方と喋ることが楽しくなってきて」
「良いことじゃん」
「最近忙しくなって。それでも、私のことを気にかけてくれて」
「……優しいね」
「そうなんです。優しいんです」
「……うん」
「さり気なく体調の心配してくれたり、『ずっとパソコン見てると疲れるよね』って、チョコレートくれたり」
「気遣い出来る人だね」

私は綾ちゃんの話に、何度も相槌を打ちながら聞き進めていた。

「何度か、一緒に帰ってるんです。その時も、時間とか電車のこと気にしてくれて、夜道も『危ないから』って、車道側に立ってくれたり、明るい道を選んでくれたり」
「めっちゃイイ人じゃん」

一緒に帰っている、という話を聞いて、私はそれが同じ会社か、もしくは今同じプロジェクトの人間だと判断した。綾ちゃんと気兼ねなく喋り、そんな気配りが出来る人間。

“あ。もしかして宮本君? 最近同じくらい遅いし、よく喋ってるよね。綾ちゃんが素っ気なくても、全然へこたれてない、というか、気にしてなさそうだし”

何とも微笑ましい。2人なら、良いカップルになりそうだ。だが、思ったことはまだ綾ちゃんには言わない。もし万が一間違っていたら、気まずいし恥ずかしいものがある。でも、少しだけ探りを入れてみることにした。

「……もしかして、同じ会社の人?」
「あ、はは。バレちゃいますよね。そうです。同じプロジェクトの人で」

“これは! やっぱり宮本君!”

「そうかそうか。2人で出かけたりとかはしないの?」
「実は、先日勇気を出して連絡先を聞いてみたんです。そしたら、すんなり教えてくれて。少しずつ、連絡を取っているところで」
「じゃあ、誘ったりはまだなんだ」
「はい。でも、もう少しやり取りをしたら誘ってみようかなと」
「綾ちゃん頑張るねぇ。」
「……初めて、頑張ってみようかな、って思えたんです。でも、同じプロジェクトで、誰にも相談出来なくて。千景さんなら、ちゃんと話聞いて、黙っていてくれるかな、って思ったから」

少し泣きそうな綾ちゃんが、これだけ頑張って話してくれたのだ。私もそれに応えたい。

「大丈夫。誰にも言ったりしないから。安心して」
「はい。有り難うございます」

初々しい。私にも、こんな時があった。見ているこっちも胸がドキドキして、少し顔が赤くなる気がする。

「ちなみにさ」
「はい」
「名前、って、聞いても良いの?」
「その人のですか?」
「うん。あ、いやなら別に」
「大丈夫です。千景さんも、よく知っている人ですよ」
「そっか。……それで、その人は…」

“宮本君だったら、宮本君の良いところめっちゃ言おう! 宮本君に探り入れても良いし! 千景さんに任せなさい!”

意気込んで綾ちゃんの回答を待つ。

「その人の名前は……」

ゴクリ、と唾を飲み込んだ。

「桐谷航河さんです」

「──え?」