第63話:【現在】直人からの報告① (あの時、一番好きだった君に。)

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 今日は少しばかり忙しい。何故かは分からないが、その分時間の流れも速く感じた。カラオケの約束をしたからか、航河君とまた話すようになったからか。

「ふうぅー……やぁっと終わった」
「お疲れ七原さん。やっとでも定時っていうのが凄いわ」
「もう必死でしたよ。急に忙しくなるんですもん」
「そういや、誤字脱字チェックの確認したよ。有り難う。結構あったから申し訳なかったね」
「いえいえ、良いですよ。ああいうのって、なかなか見つけられなかったりするんですよね」
「相互チェックしても、お互いの見方や認識が一緒だったりすると、どっちもスルーしちゃったりするんだよね」
「お役に立てたなら何よりです」
「助かった。有り難う」

 私は役に立ったらしい。良かった。引き受けた甲斐があったというものだ。進捗表も大体出来上がって来たし、メンバーの確認だけしてまた見てもらおう。

「じゃあ、先に帰りますね」
「おう、お疲れさん」
「お疲れ様でした」

 いつもならスマフォに通知が来る度、ちらりと目線をやってチェックするのだが、今日はそうもいかなかった。開いてもいないから、お陰でゲームの通知から迷惑メール、メルマガまでずらっと画面に並んでいる。スクロールしても一瞬では下まで行かなくてちょっと指が痛い。

“まぁ、大したものはないよね、大体”

 殆どが迷惑メールとゲームの通知、通販を頼んだ時にチェックを外し忘れて登録されてしまったメルマガで埋め尽くされていた。

 その中に、一つ。

「あ、直人」

 直人からkiccaが届いていた。時間は14時。そこそこ前だ。

「あらあら。最近よく連絡くれるわね」

 といっても、航河君が盛大に酔っ払っていた時以来だが。私達がこの年になって連絡先を交換してからは、多い方である。

「今日は何ですかねぇ?」

 ブツブツとスマフォに話しかける危ない奴に思われるかもしれないが、幸い周囲には誰もいなかった。辺りは暗い。足早に駅へと向かう。
 電車の中でメールボックスの整理をしながら、ゲームの通知を切っていく。直人からの連絡をまた少し後回しにして。

“メルマガ要らない奴配信止めなきゃ。ゲームの通知も切って……いや、やってないのはアプリごと消す?”

 なんてやっているうちに、最寄り駅へと到着した。

“あ、いけない。直人からのkiccaの存在、忘れるところだった”

 慌ててkiccaを開く。

『この間は、いきなり電話かけて申し訳なかった。ちょっと、話あるんだけど時間ある時教えて。男と2人では会わないんだよね?』

“お? 何でそれを知ってるんだ? 私言ったっけ?”

「うん、旦那と異性と2人では会わないって約束してるんだ。kiccaでメッセージじゃダメ?」

 家に着く頃、その返信が来る。

『あー、ほんとだったんだ。いや、航河から聞いた。メッセージでもいいんだけど、上手く文章に書けるかどうか。喋る方が得意』

 航河君から聞いたと言われ、納得した。その話は何度かしているから。

「分かった。大事な部分まとめてもらって、そこだけ電話でもいい? 後のなんだろ、補足みたいなのは文章で。家に帰っても、色々やることがあるからさ」
『りょーかい。なんか仕事みたいで面白い。まぁ、すぐにってわけじゃないから、金曜でもいい? 俺休みだから、ちょっとまとめる、その日に。そしたら長くならないと思うから』
「いいよ金曜日で」
『じゃあまたどれくらいの時間に電話かけるかとか、連絡する』
「はいはい。ちなみに、何の話?」
『んーっと。航河の話』

“そこか……!”

 あの飲み会の日に、何かあったのだろうか。そう言えば、航河君も『直人から何か聞いたか』ってきにしていたっけ。

「わかった」

 きっと、金曜日なんてすぐにやってくる。逸る気持ちを抑えて、金曜日を待った。