第57話:【現在】新年 (あの時、一番好きだった君に。)

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 「明けましておめでとう御座います」
「明けましておめでとう御座います」
「あけましておめでとーございます!」

 新しい年を迎える朝、私達はお雑煮とおせちを囲み、テーブルについていた。おせちといっても、これは市販品で、作る気力と体力はなかった。
 ありがたいことに、今年はお雑煮をひろ君が作ってくれた。去年は私が作ったから、交互で来年は私だろう。

 去年は年明けの瞬間、私と夏乃の2人だけだった。12月31日も仕事だったひろ君が、帰り道で年越しを迎えたからだ。今年は違う。しっかりと年末年始の連休をもぎ取り、年が明ける瞬間を私と夏乃の3人で迎えた。
 そのあとはぐっすりと眠り、起きてお雑煮を作ってくれたのだ。なんとも優しい旦那様である。

「初詣行く?」
「混むよね、どうしようか、俺はどっちでもいいよ」
「おみせ、でる?」
「出るよー、夏乃の好きな綿菓子に、ママの好きなタコ焼きに……」
「いく!」
「……じゃあ決定ね」
「準備しなきゃだわ」
「あ、その前に。夏乃、お年玉だよ」
「やった! わーい! ありがとう、パパ、ママ!」
「どういたしまして」
「大事に使うのよ?」
「はぁい!」

 のんびりとした正月ムードはまた後で、おせちとお雑煮を食べた後、初詣に行くことにした。近くの神社はそこそこ大きく、参拝者も多い。まぁまぁの数の屋台が出るので、可愛い夏乃の楽しみを見つけに行くのだ。

 近くの道から規制されており、警備員さんやカラーコーンが目立つ。相変わらず夏乃は屋台に目を輝かせて、参拝後にいちごあめとスーパーボールすくいでとったボールの袋に、また大きなわたあめの袋を抱えていた。

「なつのしあわせー!」
「前もおんなじこと言ってなかった?」
「なつのおぼえてないー!」
「好きなものに囲まれりゃ、そりゃ幸せだよなぁ夏乃」
「そうだよー。ママはたこやきたくさんかわないの?」
「沢山はちょっと……要らないかな……」

 山盛りのタコ焼きを想像し、お腹いっぱいになる。確かに好きだが、胃もたれしそうだ。私は何も買わず、ひろ君はクレープを買い、家へと戻った。

 今年は元旦にはお互いの実家へ挨拶には行かず、2日と3日に行くことになっていた。その方が混雑に悩まずに良いと話し合った結果だ。そんなに遠い距離ではないが、車を出してくれるひろ君のことも考えてのことだ。
 長居はしないことにしている。途中お茶を用意したり、ご飯の準備も考えなければならないから。どちらの親も『もっといればいいのに』と言うが、お互いがお互いの親に気を遣うし、ちょうどいい距離だと思っている。

「明けましておめでとう、と。やっぱり年賀状よりkiccaとメールが多いねぇ、新年の挨拶」
「俺も専らそれだもん」
「本当に年賀状出さなくて良かったの? ひろ君のご両親には、私から出しておいたけど……」
「良いの良いの! 住所もわかんないし、友達もみんなメッセージ来るし」
「なら良いんだけど……」
「その内、夏乃が友達に年賀状送るようになりそうだな」
「そうね。私が子どもの頃は、芋判とか作って押したなぁ」
「俺も作った。でも判押すより食べたかった」
「食い意地」
「だってサツマイモ好きだもん」
「明日は天ぷらでも揚げる? サツマイモにカボチャ、きのこは舞茸が椎茸かなぁ。それにエビとイカと……」
「よし、買いに行こう」

 懐かしい話をしながら、メールとkiccaのメッセージを返していく。摩央は結婚してから年賀状のやり取りをしていたが、今年は年賀状プラスkiccaが届いた。

「今年もよろしくねー」
「明けましておめでとう」
「あけおめー」

 この日に使うためだけのスタンプを購入し、皆に送る。年に数回しか使わないが、可愛いものを見つけたのでつい買ってしまった。後悔はしていない。だって、可愛いから。

“──やっぱり来ないか”

 この日、1日待ってみたが、航河君からの挨拶は届かなかった。それは、三が日を過ぎても変わらなかった。