第56話:【回想】プレゼントと飲み会と④ (あの時、一番好きだった君に。)

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 「わっ! 大きなケーキ! 凄い!」

 いち早く反応したのは広絵だった。直人と2人でデートして今日は来ないと思っていたが、美味しいご飯が食べられると聞いて、デートの途中で参加することにしたらしい。目をキラキラ輝かせて、大きな四角いデコレーションケーキを眺めていた。

“わぁ……確かに凄い”

 目の前に置かれたケーキは、皆の視線を独り占めしていた。真っ白な生クリームに、大きな苺が沢山。チョコレートにクッキーで作られたクリスマスツリーにプレゼントの箱が、鮮やかなアイシングで彩られている。それらに囲まれて、センターにはこれまた大きなチョコプレートに、【Merry Christmas!】と筆記体で書かれており、見事に豪華な仕上がりとなっていた。

「はーい、皆、プレゼント出してー!」

 店長に言われて周りがゴソゴソと準備をする。私はラッピングされたアイピローを取り出した。

「プレゼント、隣の机に置いて。番号の書いた紙を貼るから、皆はこの箱の中から紙を一枚選んでね。そこに書いてあった番号のプレゼントを貰えるよー」

 私のアイピローには、【3】の数字があてがわれた。自分も欲しいと思っていたから、3番が当たっても私は嬉しい。

「順番どうしようかな。ジャンケンにするか、不公平にならないように。勝った人からくじ引けるってことで」
 運に運を重ねるのだ。何が当たるかわからない。

「いくよー! さーいしょはグー! じゃーんけーん……」

 ジャンケンの結果、私は5番目にくじを引くことになった。私の番に来ても、自分の出したアイピローはまだ引かれていなかった。

“よし……これだ!”

 私は引いたくじをゆっくりと開いた。

「あ、11番だって」

 11と書かれたプレゼントを探す。見付けたのは可愛らしい紙袋だった。

“何だろう、開けるの楽しみだな”

 航河君は10番目にくじを引き、3番ではない番号を引いた。その時、どんな顔をしていたかは見れていない。 プレゼントが全員の手に行き渡った後、本日2個目のケーキを口にした。これも非常に美味しく、大満足の会だった。

 帰る時、『航河は千景ちゃん送っていくんでしょう?』と、店長に2人一緒に店を出された。どちらの返事も待たずに放り出された私達は、無言で横並びに歩く。

“なんか、なんか気まずいんですけど……?”

 間を流れる微妙な空気が痛い。どうしようかと思っていると、航河君が先に口を開いた。

「ご飯美味しかったね」
「あ……そうだね、うん! 凄く美味しかった。ケーキも豪華で良い味だったし」
「プレゼント、何が当たった? まだ見てない、けど、なんか良い匂いするんだよね、この紙袋。柑橘系の、良い匂いが」
「香水か何か?」
「なのかなぁ。家に帰って開けるのが楽しみ」
「俺も家帰ったら開けよ」
「楽しみだねー」
「あのさ、千景ちゃん」
「ん? ……何?」
「途中、電話で抜けていったじゃん?」
「あぁ、うん」
「あれ、誰……?」

“気にしてたの!?”

 摩央に言ったら、きっと大騒ぎするだろう。オミさんにしか言われなかったから、航河君は気にしていないと思っていた。

「え? 何で?」

 口から出たのは、素直に今思った言葉だ。

「いや、そんな言えない相手?」
「別に、そんなことないけど」
「やけに楽しそうだし、急いで外出ていったから。……俺以外に、仲の良い男がいるのかと思って」

“あはは、普通は好きな子とか彼女に言う言葉ですよねー……”

「そんなんじゃないよ」
「本当に?」
「うん。だってあれ、摩央だもん」
「え? 摩央さん?」
「うん。酔っぱらった摩央。メールしてたのにいきなり電話かけてきたから、何かあったのかと思って慌てて出た」
「……なんだ」

 そこからは普段通りの帰り道。私は家に着くと袋を開け、中身を確認した。

「あ、オレンジとグレープフルーツの香水だ! 嬉しいなぁ」

“航河君、何だったんだろう”

 後日、1枚の写真が携帯に送られてきた。私の買ったアイピローを持った航河君の写真が。メールに『当選者を買収しました』の一文を添えて。