第50話:【回想】もしものお話② (あの時、一番好きだった君に。)

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 「んで、航河君からメールの返事来たの?」
「来てない」
「意外と遅いんだね、返事来るの。もっと早いかと思ってた」
「まぁまぁ遅いよ。いつもね」

 私達は講義を終え、学校の近くのカフェに来ていた。このお店の抹茶パフェは、私のお気に入りである。ほろ苦いクリームに濃厚なアイスクリーム、黒糖のゼリーがたまらなく美味しい。
 摩央とテストの話、レポートの話をするために此処へ来たのだが、ついつい話題が逸れてしまう。いつものことだが。

「でもさぁ、いつも思ってたんだけど、航河君彼女いるのに千景に干渉し過ぎじゃない?」
「うーん、それは私も思う」
「なんかさ、好きな子にちょっかい出すみたいだよね。やり過ぎだけど」
「保護者って言われてるよ、バイト先の人に」
「あー、分かる。確かに保護者っぽい」
「最近じゃあもう気にならなくなってきたよ」
「うん、それおかしいから」

 摩央は苺パフェを頬張りながら、思ったことを口に出す。私自身も分かってはいたことなのだが、改めて他の人から言われると、実感が増すから不思議だ。
 そうすると、余計に好きな気持ちとこのままで良いのかという気持ちがせり上がって、心の中で喧嘩を始める。駄目だと分かっていて、現状に甘んじている私は、狡い人間だと。

 ヴーヴヴ、ヴーヴヴ──

「あ。航河君だ」
「マジ?噂をすればなんとやらって奴?」
「そうかもね。……見るの怖い」
「私が見てあげようか?」
「……自分で見ます」

 送信者を確認して、ゆっくりと携帯を開く。メールの受信画面には、確かに一通、航河君からのメールが来ていた。

“なんだか緊張するなぁ……”

 少々躊躇いながらも、意を決して開くためのキーを力強く押す。

『行くの? クリスマスイブなんてデートじゃん。祐輔の態度見てると、千景ちゃんに気がありそうだけど。何かあるかもしれないよ? 行っていいの?』
「うー……まぁ、まとも?」
「まともっちゃあまともね」

 もっといつもの調子で返ってくると思っていた。だが、今日に限っては真面目な返信だ。

「どうしよう、なんて返そう……」
「そこは自分で考えな? 言っていることがもっともなら、ちゃんと返せばいいのよ」

 真面目に返されたなら、こちらも真面目に返すべし。ゆっくりと指を動かして、言葉を選ぶ。打っては消し打っては消しを何度か繰り返し、漸く出来上がった文面を送った。

「特に断る理由もないし、予定もある訳でないから、良いよって言ってもいいかなって。確かに、何か、が気にならない訳ではないけど。行ってみないと分からないしね」

“次も返ってくるかな……”

 ゆっくりと、送信ボタンを押した。

「あー……変な返信してないよね……」
「大丈夫じゃない? で? 実際行くの?」
「用事もないから、別に行ってもいいかなって気になってきた。シフトまだ出してないから、取り敢えず休みにしとこうかな」
「出掛けるにも、何処も混むのが難点だよね」
「そうそう。しかも休みじゃん? 朝から何処に行っても人多そう」
「だよね。イチャイチャカップル多いしさ、歩いてて邪魔になってくる」
「そういう自分はどうなの」
「うちはサッパリしてるから」
「ほんとかねぇ……」
「本当!」

 大好きなパフェはあっという間になくなり、お気に入りのフレーバーの紅茶も、かき混ぜるとカラン、と氷とグラスのぶつかる音がした。
 大学の授業もこれくらい早く時間が流れてくれたら、なんてくだらないことを考えていると、二度目のバイブ音が鳴った。

「あ、今回は早いね。」
「返事来た?」
「来た来た!」
「なんて返ってくるんだろう。さっき普通だったし、今回も普通かな?」
「なんとなくだけど、そんな気してくるよね」
「あんまり緊張しないんじゃない?」
「確かに。まぁ、摩央がいるから、っていうのもあるけど」
「あら、ありがと」

 クスっと笑い、私は再び携帯を開く。今度は受信したメールを躊躇いなく開いた。