第42話:【現在】忘年会① (あの時、一番好きだった君に。)

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 うちの会社は少し変わっている。いや、他の会社がどうしているかわからないから何とも言えないのかもしれないが、うちの会社の忘年会は、社員の家族も、うちの会社に出向してきている会社の社員も、参加可能なのだ。
 どうも、自社の社員の出席率があまり良くなかった頃、このシステムにしたら出席者が増えたらしい。社長が盛大にパーティを開くことが好きだそうで、それなりに出席者が増えた今も、このシステムは続いている。
 今年もその忘年会がやってきた。子どもも勿論OKなのと、自社の人間は家族も参加費がかからない為、私達七原家も毎年参加している。

「今年も豪勢だね」
「ほんとだね。あ、またビンゴ大会あるらしいよ」
「そうなの? 今年は当たるといいなぁ」
「去年は何だっけ、安眠枕と商品券五千円分だったっけ」
「そうそう。枕は押し入れの中」
「今年はシステムが変わって、ビンゴした人からくじを引いて、書かれている番号の商品を貰うみたい。外れは図書カードとの噂」
「外れでも出るのが凄いよね」
「ちなみに一番の目玉は旅行券10万円分だって!」
「……それは当てるしかない!」

 金額を聞いて、ひろ君も乗り気である。夏乃はというと、大好きな唐揚げとハンバーグをお皿山盛りに取り、頬をリスのようにしてひたすら頬張っていた。

“ビュッフェだからね……好きなだけお食べなさい”

 どうせ、月々のよくわからない会費の引き落としから支払われているのだ。当日のお金はかからないといっても、私の給料からはちゃっかり引かれている。元を取らなければ、勿体無い。

 テーブルは3人で4人席の一卓をとった。ちょうど空いていたからここぞとばかりに荷物を置いた。別に座る場所が足りていない訳ではないが、よく知らない人と相席になるのも少しばかり嫌だった。

「年々人増えてない?」
「そう思う。なんかね、うちに来てる別会社さんの参加が、増えてるらしいよ。あんまり増えても困るから、来年は人数制限設けるんだって」
「ふーん。家族は?」
「家族の制限はしないみたい」
「良かった。美味しいご飯食べたいもん」
「なしゅのもおいひいごひゃんひゃべひゃい」
「食べ終わってから喋りなさい」
「夏乃も美味しいご飯食べたい、というのは分かった」

 家族でテーブルを囲むのは気楽で良い。

「あ、千景ちゃん」
「航河君! 来てたの?」
「うん。あ、こんばんは」
「こんばんは」

 ひろ君がペコっと頭を下げた。

「皆結構来てるんだね。ビックリした」
「人気の行事よ」
「みたいだね、知ってる人のテーブル大体埋まってるし、他も結構あいてないし」
「此処、座ります?」
「え? 良いんですか?」
「席空いてますし、千景の知り合いでしょう? どうぞ」
「有り難うございます。じゃあ、遠慮なく」

“え、座るの!? 予想してなかった……”

 なんとなく気まずい。気まずいのは私だけだと思うが。空いていたのは、私とひろ君の間。円を囲むように座っていて、どちらも夏乃の隣になるような配置だ。

「あはは、千景ちゃん、相変わらず海鮮好きだね」

 私のお皿に盛られた、エビチリにエビマヨ、海鮮あんかけ焼きそば、イカのフリッターにエビフライを見て航河君が笑った。

「美味しいじゃん。特にエビ」
「何か、昔もそんなこと言ってなかったっけ?」
「言ってたかもしれない」
「言ってたよ、俺、聞いたもん」
「好みはそんなに変わらないよ」
「……へぇ。……そっか」

“なんか、気になる”

 含みを持たせたような喋り方に違和感を抱く。ただ、ひろ君はそれを静かに聞いていた。

 今日の航河君もよく喋る。喋らないと生きられないのだろうかと思うくらいに。しかも、仕事中の話か、昔の、一緒にバイトをしていた頃の話ばかりを。世間話だとか、そういったものは一切ない。こちらから関係ない話をしても、すぐに話の腰を折ってしまう。

「皆様お待たせ致しました。これより、お待ちかねのビンゴ大会を始めたいと思います!」

 その一言で、会場が一気に沸き上がり、私達のテーブルも司会者へと視線を向けた。