「わぁ、オミさんち綺麗だね!」
案内されたのは1Kのマンションだった。まだ新築のようで、外観も綺麗、共有エリアも、勿論内装も綺麗だった。
「帰って寝るだけだけどさ。綺麗な方がテンション上がらない?」
「確かにね。綺麗だと帰って嬉しい気分になるかも」
「でしょでしょー。あ、適当に荷物置いて」
オミさんの部屋は、綺麗に片付けてあった。余分なものはあまりなく、整理整頓されている。
「ゲームはテレビの横に並べてある奴ね。あれ、ハードに入れたままだっけ……」
「横ね、見てみる」
オミさんに言われた通り、テレビの横に、ゲームやCD、DVDのケースが幾つか並んでいた。ハードはテレビ台の下に見える。
“えーっと。中身入ってるかは出してみればいいか”
ハードの取り出しボタンを押す。すると、中からDVDが出てきた。
「……オミさん?」
「何?」
「……こういうものは、来る前にしまっておいて欲しいんだけど」
「は? え? ……あっ!」
オミさんは私の手からDVDを奪うと、テレビ横に並べてあったケースを一つ手に取り、その中へとしまった。
“……オミさんの趣味がわかってしまった……”
知りたくもないことを知ってしまい、凹みつつギャルゲのパッケージを探す。
“オミさん……ゲームとCDと一緒に、AV並べるのやめてくれないかな……”
「オミさーん。趣味全開だよー」
「わっ! あんまり見るな!」
航河君は航河君で、本棚から漫画を取り出そうとして、アレに気付いたらしい。
“せめて一箇所にまとめればいいのに”
「男なら持ってるだろ!」
「オミさん、巨乳好きなのね」
「マジやめて」
「千景ちゃん、そっち何が入ってたの?」
「え? えーっと、さ」
「だぁぁぁぁ! 千景ちゃんそんなこと口にしちゃダメ! 航河も聞かない!」
「はいオミさん片付けて―。千景ちゃんの目に入らない所にね?」
「……はい。すみません」
盛大に性癖がバレてしまったオミさんは、しょぼんとしたままDVDを床収納にしまった。
「電源入れて中身確かめなくて良かったね?」
「ほんとそれ……」
自分の行動を褒めつつ、1本しかないギャルゲをハードへ入れた。
「で? 何がクリア出来ないの?」
「隠しキャラがクリア出来ない」
「どの子? これ、やったことある」
オミさんが持っていたゲームは、古いギャルゲだった。人気があり、幾つか続編が出ている。私がやったことのあるゲームと、偶然にも同じ物だった。
「この子。普通にデートとか誘えないじゃん? ちゃんとクリア出来るんだよね?」
「あー、この子ね。出来るよ。めんどくさいけど。一回でもフラグ立て忘れるとクリア出来ないし」
「なんてシビアな」
「告白もランダムだよ。フラグ全部立てた上で人の告白断わった後に確率で乱入だから、もう1人仲良い子作って振った後来なかったら告白前からやり直し」
「なんちゅーめんどくさい仕様。それにしても詳しいね」
「私もクリア出来なくて、悩んだから」
「先生宜しく」
「教えるから、自分でやってね?」
「……はぁい」
“知ってるゲームで助かった……のかな?”
私とオミさんがゲームをやっていると、隣のベッドで寝っ転がって航河君が漫画を読み始めた。
「頑張ってー」
「お前何しに来たの」
「千景ちゃんの番犬としてきました」
「……千景ちゃん、コレ必要?」
「うーん……わかんない」
「酷いなもう。心配したのに」
そのまま漫画を読み進める航河君をおいて、私とオミさんはただひたすらゲームを進めた。
「あ、ちょ、ごめん、俺先シャワー浴びてくる。やってて」
「はいはい」
オミさん、私、航河君の順でシャワーを浴びた。途中買ってきたおやつを食べて歯を磨き、航河君が漫画を読み終わる頃には、なんとかクリア出来た。
「やった! マジ嬉しい! 千景ちゃん有り難う!」
「いえいえ。達成感あるよね」
「コンプだコンプ! よっしゃあ!」
「そんなに喜ぶとは思わなかったよ」
「あー気分いい。このまま寝よう」
「そうだね、もう遅いし」
とここで、一つ問題が出た。
「オミさん、ベッド一つしかなくない?」