第39話:【回想】泊まる泊まらないの攻防② (あの時、一番好きだった君に。)

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 「今日も仲良く出勤?」

 からかうように店長が話しかけてくる。このやり取りも、もう何度目だろうか。飽きるくらいには同じ台詞を聞いていると思う。

「店長も飽きないですね」
「反応がなくなってきて寂しい」
「めんどくさいですもん」
「……最近対応が広絵に似てきたよね」
「そうですか?」

 広絵はサッパリしているから、何でもはいはいといなしていくだろう。私もそれが出来たら良いなと思っていた節は確かにあった。

 今日はどうも時間の流れが速い。この後に予定が控えているからだろうか。

“それにしても……何で私、泊りがけでバイト先の社員さんの家でギャルゲすることになってるんだろう……”

 ゲーム自体は好きだし、まぁギャルゲをするのにも抵抗はないが、男性の家で泊りがけというのがイマイチ納得いかない。

“航河君がいるから良いけど……。って、航河君も男の人じゃん。女私しかいないじゃん!”

 今更気付いた。が、特に手を出してくるような2人でもないし、航河君が来ても平気ということは、私のみでないとダメな理由もないのだろう。……皆が来てくれないだけで。

“……あれ? 寧ろ航河君だけじゃダメだったの? 別に良くない?”

 航河君がついてきてくれる、という部分のみクローズアップしてしまったが、航河君が来てくれるなら、私行かなくても良いんじゃないか? と思い始めた。

「航河君?」
「なにー?」
「今日のオミさんち行くのさ、別に航河君だけでも良くない?」
「……良くない」
「なんで!?」
「千景さん行かないなら俺も行かない」
「なんという……」

 仕方なしに再度腹をくくったが、やはり納得がいかないまま、ラストまで仕事をこなしていった。

「店の前で待ってれば良いのかな」
「俺電話してみるよ」

 航河君がオミさんへ電話を掛けた。

『もしもーし』
「あ、お疲れ様です。航河です」
『おー、お疲れ。終わった?』
「終わりました。今店の前です」
『今近くのコンビニ来てるから、そこまで来てくれる? 飲み物調達中』
「分かりました。千景ちゃんと一緒に向かいますね」
『よろしく』
「はい。じゃあ失礼します」
『はいよ』
「……コンビニにいるってさ。来てって」
「はいはい。行きますか」

 コンビニを目指して歩き始める。ちょうど少し、お腹も空いていた。

「何のゲームなんだろうね」
「んー……有名どころの新作じゃない? なんとなく、オミさんってミーハーなイメージ」
「私でクリア出来るのかしら、ってか、私役に立つのかしら……」
「ハード、パソコンじゃないといいね」
「……だったら帰るわ」

 そんなものイキナリやらせないだろう、そう思ったが、万が一パソコンのゲームで年齢指定が入るものだったら、遠慮なく帰ろう、そう心に誓った。

「千景ちゃん、ギャルゲなんかやるの?」
「好きなのはRPGとかシミュレーションだけど。やったことはあるよ」
「敢えて選んだ?」
「なんか、こう、どんな風に作ってあるのかやってみたくて」
「面白い?」
「んー……どうだろう。私のやったゲームは、イベントはあったけど割と単調な作業多めだったからなぁ。好き嫌いが分かれるかも。あと、結構キャラが極端」
「そうなの? カラフルな髪の毛してるイメージなんだけど」
「それは結構あるね。個性を付けるんだろうけどね」

 航河君とギャルゲの話をする時が来るとは思わなかったが、そんな話をしているうちにコンビニへと到着した。

「オミさんお疲れっす」
「お疲れ様です」
「よぉ。航河、千景ちゃんお疲れ。悪いね急に」
「ほんとですよ……何で私が」
「だってさー、友達にも声かけたんだけど、誰も来てくんねぇんだもん」
「人格の問題じゃないですか?」
「私もそう思う」
「お前ら酷くない?」
「酷くないよねぇ? 千景ちゃん」
「うんうん。酷くない酷くない」
「じゃあ何でお前ら来てくれたの?」
「行かないとオミさん翌日から仕事来ないんじゃないかと思ったから」
「千景ちゃん1人でオミさんの家に泊まらせる訳にはいかないから。オミさんの用事はついで?」
「……取り敢えず優しさはあるんだな」

 オミさんは持っていた籠に私と航河君が選んだデザートを入れると、そのままお会計へと向かった。

「これバイト代ね」
「ういっす」
「ありがとーオミさん」

 3人でオミさんの車へと乗りこみ、家へと向かった。