5. 足りないもの (リィナとよるのないまち)

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 神さまとリィナ、ガルーダは、大きな瓶を運ぼうとしましたが、大きくて重くて、とても運ぶことが出来ません。

「ワシもとしじゃのう。よし、一つ、まほうを使ってみようか。リィナちゃん、そのつえを取ってくれんかね?」
「これ? はい、どうぞ」
「ありがとう」

 リィナはかべに立てかけてあった、先がとんがって頭がグルグルうずまきの、木で出来たつえを神さまにわたしました。ただのつえに見えるけど、これはどうやら、まほうのつえのようです。

「見ていてごらん」

 神さまは、グルグルうずまきを夜のもとの入ったビンに向けました。そして、えいっとじゅもんをとなえると……。

「わぁ! すごい!」

 プカプカと、あんなに重たかったビンがういているではありませんか。ビンが動く、と中でたぷんたぷんと夜のもとも動きます。

 初めてのまほうに、リィナは目をかがやかせ、とってもステキな笑顔を見せます。本当に、うれしそう。

「さぁ、これならいいじゃろう。外に行こうかねぇ」
「うん!」

 みんなでいっしょに、おしろの外に出ました。なんとなく、外で夜のもとを見てみると、おへやの中で見るよりも、もっとキレイに見える気がしました。
 みんなで向かったのは、おしろがたつ、くものはしっこ。

「ところで、リィナちゃんたちは、どうやってここまで来たんじゃ? ふつうには、これんじゃろうて」
「あのね、くもくんのお母さんに乗せてもらったの! くもくんはね、お友達なんだよ!」
「ほうほう。リィナちゃんはすごいのう。ガルーダとも、くもともお友達になれるなんて」
「なんで?」
「そうじゃのう、きっと、大人が見たらビックリするからのう。だから、すごいんじゃよ」
「ふーん。リィナ、よく分からないけど、すごいのはいいことだよね!」

 ほめられてリィナはルンルン気分。そんなリィナを見て、ガルーダもどこかうれしそうです。

「人間が、ワシの所に来たのはこれが初めてじゃ。怖くなかったかい?」
「怖くなかったよ! だって、ガルーダさんもいるし。それに、お母さんに夜を見せたいから。リィナはがんばれるよ」
「……そうか。だからここまで来れたのかもしれんのう。よし、とっておきじゃ」

 神さまは、今度はリィナとガルーダに向かってグルグルうずまきを向けました。

「ガルーダもまだ子ども。たくさんは飛べん。そぉれ」

 神さまのまほう。お次は……

「わわわっ! すごい! リィナお空を飛んでる!」

 リィナの身体がちゅうにうきます。足はくもからはなれてパタパタ。手を動かせば、スーイスイ。

「ビンといっしょに、リィナちゃんのまちに行く。そうして、そこでこのビンをひっくり返せば、リィナちゃんのまちに夜が広がるんじゃよ」

 パアァァァアと、リィナの顔が明るくなりました。これでやっと、お母さんに夜を見せることができる。

「早く! 神さま早く行こう!」
「はいはい。おやおや、そんなに急がずとも……はっはっはっ。もとは神さまが忘れてたからのう。ごめんなぁ」
「いいよ! 神さまごめんなさいしてくれたもん! リィナは良いよって言うの!」

 大きな空を飛びながら、リィナはとってもゴキゲンです。ガルーダも、いつもは飛べない高い空を飛んで、とっても楽しそう。

 向かうはリィナのまち。今はまだ、夜のないまち。

 くもをこえて、今度はどんどんとにじからはなれていきます。大きく見えた神さまのお城も、あっという間にあんなに小さくなりました。

 リィナがまちを出た時、空はお日さまが照って、まだまだ明るい青空でした。でも今は、こいオレンジ色と、むらさき色を混ぜた色に。

 ずんずん進んで、見えてきたのはリィナのまち。リィナのまちも、うっすらとオレンジ色に染まっています。ここまでは、リィナもよく見る空の色。夕方の色です。
 それでも、さっき見た空の色に比べたらまだまだ明るく夜は遠くの存在です。

 もうすぐ夜の色が見られると思うと、リィナはウズウズ。ソワソワ。そんなリィナを見て、ガルーダもウズウズ。ソワソワ。

「この辺りで良いかのう。リィナちゃん、そのビンをかたむけて、中の夜のもとを振りまいてくれるかな?」
「はぁい! フタを取って……」

 きゅぽん、と音を立てて外れたコルクのフタは、神さまにあずけます。そうして、大きなビンを、ゆっくりとゆっくりと、リィナのまちの空に向かってかたむけていきました。

 トクトクトクトク。

 ビンから流れ落ちる夜のもとは、

 サラサラサラサラ。

 やがて、細かなすなのように、空全体に広がっていきます。

 夜が広がった空は、上の方は黒色で、真ん中はむらさきいろで、その下はこいオレンジ色で、うすいオレンジ色も少しだけ見えます。

「わぁ……わぁ! これが、これが、夜!?」

 リィナはだいこうふんです。

「そうじゃよ。でも、この黒とむらさきが、もっとたくさんになるんじゃよ。そうしたら、お月さまとお星さまが……あっ!」

 神さまは、何かを思い出しました。それもそれも、とっても大切なことを。

「あぁあぁ、大変じゃ。お星さまとお月さまに、このまちも照らすようたのむのを忘れておった!」
「それって、どういうこと?」
「つまり、このままではリィナちゃんのまちの夜は、お星さまとお月さまの光がなくて、真っ暗になってしまうということじゃ!」
「ええっ! どうしよう、そんなの大変!」

 神さまもリィナもおおあわて。

「しかたない、リィナちゃん、あそこの丸くて黄色いものが見えるかね?」

 神さまが指さしたのは、大きな大きな丸いお月さま。

「見えるよ、あの黄色くてまん丸なのが、お月さまね」
「そうじゃそうじゃ。一つ、お月さまの所まで行って、このまちを照らすように伝えてはくれんかのう」
「わかった! リィナ、行ってくる!」
「たのんじゃぞ。ワシはここで、夜のもとを全て振りまいておくからの」

 神さまにたのまれたリィナは、ガルーダとともに、お月さまの元へと飛び立ちました。