4. 神さまと夜 (リィナとよるのないまち)

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くもくんのお母さんは、どんどんとにじにそって空の上の方へ飛んで行きます。すけていたにじも、上の方は濃くハッキリとした色に、

「にじって固いのね」

リィナは手を伸ばして、にじに触ってみました。七色のにじはとてもキレイで、サラサラと気持ちの良い手触りです。
コンコン、とノックをしてみると、コンコン、と、固い音が返って来ます。

リィナは、くもくんのお母さんの上で、たくさんのお話をしました。

自分のすむまちには、夜がないこと。お母さんに、また夜を見せてあげたいこと。お月さまとお星さまを見てみたいこと。
そして、大人が『悪い』と言う、このガルーダは『良い子』であること。

「どうして大人は、なんでも『決めつけ』ちゃうのかしら」
「そうね。難しいけど、リィナちゃんも、大人になったらきっと分かるわ」

くもくんのお母さんは、困ったように笑いながら、リィナに言いました。まだまだ、リィナには分からないことがたくさんあります。
どうして、くもくんのお母さんが、困っているのかもわかりません。

「リィナちゃん! もうすぐ、神さまのお家につくよ!」
「わぁ! ほんとう? すごく楽しみ!」

リィナはワクワク。ガルーダもワクワク。そんなリィナとガルーダを見て、くもくんと、くもくんのお母さんもワクワク。

「ホラホラ、あの大きいの! あれが神さまのお家だよ! ちょうどにじの真ん中。くもにかくれる所。あれだよ」

くもくんがまっすぐみる先には、大きな大きなお城が。それはくもで出来ているのか、なんとなく、ユラユラとゆらいでいるように見えました。

ゆっくりとお城に近づいて、ふんわりと地面に降り立ちます。くもで出来た地面は、優しくリィナの足を受け止めてくれました。ポフポフと踏みしめると、ふしぎな感じがしました。

「ここでお別れかしら。それじゃあね、リィナちゃん」
「ありがとう、くもくんのお母さん!」

その横で、くもくんはモジモジ。何か言いたそうです。リィナとガルーダを見ては、目をそらします。そして、また見つめてのくりかえし。

「どうしたの? くもくん」
「あのね、えっとね……」

くもくんは、がんばって言いました。

「リィナちゃんは、ガルーダとお友達なんてすごいね。人間はみんなこわがるのに」
「ガルーダさんは怖くないよ? とってもやさしいの!」
「そっか……。ねぇ、ボクもお友達に、リィナちゃんとガルーダさんとお友達になれるかなぁ?」
「なれるよ! ……あれ? もう、お友達じゃあないの?」

リィナは首をかしげました。まいごのくもくんを見つけて、ガルーダさんとくもくんのお母さんを探して。もう、とっくに友達だと思っていたからです。

「あっ……! そっか。いっしょにお母さんを探してくれて、もうお友達だね!」
「そうだよ! もうお友達だよ!」

くもくんは、姿の違う自分が、お友達になれるのか、と、心配をしていました。でも、リィナとガルーダにとって、そんな心配はいらないものだったのです。

姿が違っていたって、同じしゅるいじゃあなくたって、友達になるのはカンタンなのだから。

「夜がまちに来たら、くもくんも遊びに来てね! 待ってるよ!」
「うん! 必ず行くよ!」
「ぜったいだよ! それじゃあ、さようなら!」
「さようなら、リィナちゃん!」

リィナは、くもくんとくもくんのお母さんと、今度こそお別れをします。

ちょっぴり苦しくて、胸がキュッとなりました。けれど、また会えることを考えたら、じんわりとあたたかく、やさしい気持ちになりました。

何度も振り返るくもくんに、たくさん手を振って見えなくなったころ。リィナとガルーダはくるりと向きを変えて、神さまのお城をノックしました。

「神さま! こんにちは!」

リィナは元気よくあいさつをします。しばらく待っていると、中からガチャリ、とドアを開ける音がしました。

「誰じゃね? 珍しいのう、こんな所にお客さんなんて……」
「はじめまして、神さま! リィナはリィナ。夜を探して、神さまのところに来たの!」
「夜……? あぁ、あぁ! あのまちにすむムスメさんかのう。入りなさい」

真っ白なヒゲを、手のひらでなでながら、リィナたちをむかえてくれたのは、ニコニコと笑うおじいちゃんでした。背はちいちゃくて、ぽよんぽよんと、まるまるとした体です。

「オレンジジュースでいいかのう。ほら、クッキーも食べなさい」

リィナとガルーダをおうちに入れ、ジュースとおかしをふるまいました。おいしいジュースとおかしに、リィナもガルーダもニッコリ。

「それで、夜を探しに来たんじゃったな。すまないのう。リィナちゃんのまちに夜を渡す前に、ケガをしてしまって。それでなぁ、その……」

神さまは、なんとなく言いにくそうです。

「そのままリィナちゃんのまちに、夜を渡すのを、すっかり忘れておったんじゃ」
「えー!? 神さま忘れていたの!?」

まさか夜を忘れていたなんて、リィナもビックリ。わっはっはと笑う神さまを見ていると、なんだかリィナも面白くなって、思わず笑ってしまいました。

「長い間、夜がなくて不便じゃったろう。今から、夜を渡しに行くぞい!」
「やったぁ! 夜に会えるのね!」
「夜にはもとがあってのう。それがこれ、こっちじゃ」

神さまは手まねきをして、リィナとガルーダを別のお部屋にあんないしました。
そこにあったのは、大きなガラスのビン。中には、黒や赤、むらさきや深い青、オレンジが顔を見せる、ふしぎな色の液体でした。

「これは夜の絵の具を溶かした、夜のもと、じゃよ。これを空の上からふりまくんじゃ」

ずっと見ていても飽きなくて、なんだか吸い込まれそうな、そんな夜のもと。

「リィナちゃんとガルーダも、手伝ってくれるかね?」
「もちろん!」
「キィィイ!」

元気よく返事をします。
こうして二人は、神さまのお手伝いをすることになりました。