どんどんどんどん、リィナとガルーダはにじに向かって進みます。ですが、遠くてなかなか近づけません。
「どうしよう、このままじゃあ、夜ご飯の時間になっちゃう」
リィナは今にも泣きそうです。すると、ガルーダが体をかがめ、羽でリィナを引きよせます。さらに羽を動かして、チョイチョイ、と、自分の背中をさしました。
「うーん? 乗っても良いの?」
「キィィ」
「わかった! ありがとう!」
リィナはガルーダの背中によじ登り、しっかりとつかまりました。ガルーダは羽を大きく広げ、空へと旅立ちます。
「わぁ! すごい! 高い! はやい!」
キャアキャアとはしゃぐリィナを乗せて、ガルーダはにじに向かって空を進みます。
高いと言っても、危ないと思ったのか、ケガをしているからか、周りに生える木の高さより、少し高いくらいです。
「あっという間だね、ガルーダさんはすごいんだね!」
リィナにほめられて、ガルーダはとてもうれしそうです。
鼻歌を歌いながら、にじまであと少し。
「あれれ? にじの足がないよ?」
リィナは気付きました。にじのすそが、すけていることに。近づいてよく見てみます。そして、そっと触ってみました。
「えーっ! さわれない!」
すけて色が薄くなったところは、触ることができませんでした。
上の方の色は濃いから、きっと登れる。でも、薄いところは登れない。リィナは考えました。
「ガルーダさん、上まで飛べる?」
ガルーダは、残念そうに首を横にフリフリと振り、答えました。
「そっか」
どうしよう、と、リィナは泣きそうになりました。
するとそこへ……
「うわぁぁん! お母さんどこー!」
誰かの泣き声が聞こえます。
「んんっ? だぁれ? 誰が泣いているの?」
「グスン……お母さん……」
リィナの周りが急に暗くなりました。おかしいなと思って、空を見上げてビックリ。そこにいたのは、いつもお空にプカプカ浮かんでいるくもだったのです。
「あれれ? くもさん、どうしたの?」
リィナは大きな声で言いました。リィナの声に気づいたくもは、フワフワとリィナのとなりまでおりてきました。
となりに来たくもは、とっても大きくてまたまたビックリ。それに、他のくもは白色なのに、泣いているくもは涙で水色になっていました。
「お母さんがね、どこかに行っちゃったの。迷子なの」
「まいご? 大変! リィナがお母さんをいっしょに探してあげる!」
「良いの? グスン、うれしいな、ありがとう」
くもは泣くのをやめて、ニッコリと笑いました。リィナもニッコリと笑いました。
「雲さん、お名前は?」
「ボクはくもだよ。フワフワの、くも」
「じゃあ、くもくん! リィナはリィナよ。くもくんは、いつもはあんなに高い所にいるの?」
リィナの指さす先、ずっとずっと高い空には、たくさんのくもが浮かんでいました。今くもくんがいるのは、それよりもうんと低い所です。
「そうだよ。今日はお母さんと遊びに来たんだ。でも、はぐれちゃって」
「一人だとさみしいよね。見つかるまでいっしょにいようね」
「うん?」
「そうだ! くもくんは、にじの先に行ったことはある?」
「あるよ! 前にお母さんと行ったんだ。あそこはね、神さまのすむ、大きなおしろがあるんだよ!」
くもくんは、とても楽しそうに話します。それを聞いて、リィナはとてもワクワクしました。そして、おじさんが教えたことが本当で、うれしくなりました。
「リィナね、夜を探しているの。神さまが夜を作ったって聞いたから、にじの向こうにいくんだ」
「じゃあ、ボクがあんないしてあげる! 乗せてあげたいけど、ボクはまだ小さいから、お母さんにお願いしてみるよ!」
「ありがとう! さぁ、お母さんを探そう!」
リィナとガルーダ、くもは、それぞれ空を見上げてお母さんを探しました。
どのくもも、白くてフワフワして、みんな同じに見えます。
あっちを見たり、こっちを見たり。キョロキョロくものお母さんを探していると、同じように見えるくもの中に一つだけ、色の違うくもを見つけました。
そのくもは、くもくんと同じ水色でした。
「「ねぇ、あのくも、くもくんと同じ水色だよ?」
「わぁ! もしかして!」
くもくんはうんと速く、そのくもに向かって飛びました。ビュンビュンと風を切り、ついたその先にいたのは……
「お母さん!」
「くもくん!」
くもくんのお母さんでした。お母さんは泣いていました。くもくんを見つけて、また泣きました。青い色が濃くなって、くもくんはあたふた。
「お母さん、泣かないで。勝手にいなくなってごめんね」
「無事で良かったわ。心配したのよ」
くもくんのお母さんと、くもくんはほほをスリスリ。そうしているうちに、くもくんのお母さんも、くもくんも、体が青から水色、白色へともどって行きました。
「おまたせリィナちゃん」
「あなたがリィナちゃん? うちの子と、いっしょにいてくれてありがとう」
くもくんと、くもくんのお母さんが、リィナとガルーダの元へ降りてきました。
「色が白になったね! お母さんにも会えてリィナホッとしたよ」
今度はリィナが、くもくんにスリスリ。
「ねぇお母さん。リィナちゃん、神さまの所に行きたいんだって」
「あら、神さまの所に?」
「あそこは高いから、お母さん、いっしょに行ってあげて?」
「良いわよ。くもくんと、いっしょにいてくれたお礼に、神さまの所まで、連れて行ってあげる」
「わぁい! くもくんのお母さん、ありがとう!」
「キィキィ!」
リィナとガルーダは、くもくんのお母さんの上に乗って、くもくんを先頭にして神さまのすむ所へと向かいました。